旬食材
エゾシカ「函鹿」

エゾシカは北海道全域に約70万頭生息しており、かつては数が少ないとされた道南地域でも近年徐々に個体数を増やしています。なかでも、降雪量・積雪量が少なく、活火山の影響で冬期でも地熱が高い函館市恵山地区は、エゾシカの一大繁殖地になっています。
この地区に生息するエゾシカは、潮風に吹かれて塩分とミネラルを多く蓄えた雑草類を中心に、人間が育てたニンジン、じゃがいも、カボチャ、枝豆など栄養豊富な畑作物を食べて育ちます。10月頃から越冬に備えて脂肪を蓄えますが、温暖な環境に生息しているので冬期でも餌に不自由せず、雪解けも早いため痩せ衰えることがありません。東京の大手飲食店で実施された道内産エゾシカの食べ比べで、「函館のエゾシカは年間を通じておいしい」と高い評価を得たこともあります。
クリーンキルと迅速な処理でエゾシカ本来のおいしさを
そんな函館産エゾシカの流通・販売に力を入れているのが、元料理人でハンターの佐藤彰彦さんが代表を務めるエゾシカ肉処理施設「ソバージュ ド 函館」。函館市中心部から車で約30分、津軽海峡を見下ろす海岸段丘に処理施設を構え、年間400頭前後のエゾシカ肉を出荷しています。
品質の良さに定評のある函館産エゾシカ肉のおいしさを最大限に活かすため、佐藤さんを含む約10人の熟練した地元ハンターが、頭部か首を一発で打ち抜いて苦痛を与えず仕留める「クリーンキル(一撃急所射撃)」で捕獲。捕獲後その場ですぐに放血して体温を下げ、直ちに処理施設へ運んで捕獲から2時間以内に解体します。解体は北海道が定めた「エゾシカ衛生処理マニュアル」に従って適切かつ素早く行い、1日~3日程度冷蔵熟成させて出荷します。短時間のうちに処理されたエゾシカ肉は臭みや硬さがなく、「フレッシュなおいしさがある」と評判で、同施設は「函鹿」のブランドで販路拡大を図っています。
栄養価が高く、カロリー控えめ
エゾシカ肉は、高タンパク・低脂質のヘルシー食材。肉に含まれる脂の割合(脂質含有率)は5%程度で、普段食べている牛肉や豚肉をエゾシカ肉に置き換えるだけで、脂質とカロリーの摂取を大幅に抑え、タンパク質を多く摂ることができます。
鉄分も豊富で、その含有量は牛レバーに匹敵。特に体への吸収率が高いヘム鉄が多く含まれ、貧血予防や滋養強壮に効果が期待できます。また、脳機能向上や疲労・ストレス軽減、脂肪燃焼、疲労回復などに効果があるとされるアミノ酸の一種「アセチルカルニチン」も多く含まれており、アスリートの食事やダイエット食などとしても注目を集めつつあります。
生産者から
地元の優れた食材として地域に定着させたい

適切に処理されていない鹿肉を食べた経験から、「鹿肉は硬くてくさい」とのマイナスイメージを持つ人も多くいますが、クリーンキルで捕獲し、迅速な処理を施した「函鹿」は高級ホテルやレストランでも使われている上質な食材です。道南の食文化として定着することを目指して、今後は学校給食への提供や家庭で使いやすい商品の開発などに取り組んでいけたらと考えています。





エゾシカ「函鹿」について
産地:函館市収穫時期:通年
生産者:ソバージュ ド 函館
所在地:函館市銭亀町342-3
メール:shop@sauvage-de-hakodate.com